ヒキタクニオ

角 (光文社文庫 ひ 13-2)

著者:ヒキタクニオ

刊行:2005年10月

評価:★★★★★☆☆☆☆☆ 5点

ストーリー:酔っ払って帰った次の日の朝、麻起子が目を覚ますと頭に角がはえていた。恋人の山平にノコギリで切ってもらおうとするが、怖くて踏み切れない。髪を巻き付けて「チーママ」ヘアで角を隠して、これまで通り生活する麻起子。バレると大変だとビクビクしながら仕事をこなすが、だんだん角の存在にも慣れてきた。角が生えているのは普通ではないが、それまでの麻起子の普通の生活は、角がはえたことで徐々に変化していく。

感想:朝起きると自分に角がはえているって、一体どんな感じでしょう? 私は男だから髪で角を隠すこともできません。個人的には「何かはえてきた」で済ませるような気もしますが、周りがほっとかないでしょう。自分に角がはえたことよりも、そっちのほうが面倒です。そっちのほうが面倒だから周りに気付かれないように角を隠して生活しなければいけないってのが、かなり面倒です。

出版社の校閲部で働く麻起子。そこそこ仕事は出来そうですし、職場の人間関係に悩んでいる訳でもないし、恋人もいます。普通にまあまあの人生です。世の中の殆どの人と同じ、普通のまあまあの人生。特に不満がある訳ではありません。でも逆にとても満足しているって訳でもない。これも世の中の殆どの人と同じなのではないでしょうか。私も基本的に普通の生活を送っていますが、時々、実力以上の能力を身に着けた、或いは持って生まれた運以上の運を手に入れた自分を想像し、今の普通の生活から一歩抜け出した普通じゃない生活を妄想したりします。

麻起子にとって普通じゃない生活のきっかけが「角」でした。周りに秘密にしているので角がはえた以外特に変化の無い生活に感じますが、やっぱり微妙に変化しています。いがみ合っていた相手から告白されたりとか。ささやかかも知れませんがこれも麻起子にとって普通じゃない生活でしょう。普通じゃない生活に漠然と憧れていた麻起子が普通じゃない生活を手に入れたとき、彼女はどう感じたのでしょうか。

「普通じゃない生活を手に入れるきっかけとなった事」にもよるのでしょうが、最後に麻起子は普通の生活の中に幸せを感じています。これから続くだろう普通の生活に心地よさを感じています。とても静かなエンディングです。派手なハリウッド映画みたいに180°人生が変ったってラストも爽快ですが、少しだけ何かが変った静かなラストってのもアリだと思います。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

その他のカテゴリー

さだ まさし | むよーのよー(意味の無い独り言) | サンプラザ中野 | ヒキタクニオ | 三崎 亜記 | 三浦 綾子 | 三田 誠広 | 三羽 省吾 | 中場 利一 | 乃南 アサ | 五十嵐 貴久 | 井上 靖 | 井岡 瞬 | 今野 敏 | 伊坂 幸太郎 | 伊集院 静 | 佐藤 多佳子 | 光原 百合 | 劇団ひとり | 加納 朋子 | 原 宏一 | 古処 誠二 | 司馬 遼太郎 | 吉村 達也 | 垣根 涼介 | 夏目 漱石 | 多島 斗志之 | 大石 圭 | 天童 荒太 | 太宰 治 | 奥田 英朗 | 宮本 輝 | 宮部 みゆき | 小川 洋子 | 小杉 健治 | 山田 悠介 | 川上 健一 | 川端 康成 | 市川 拓司 | 帚木 蓬生 | 志水 辰夫 | 恩田 陸 | 是枝 裕和 | 朝倉 卓弥 | 木堂 椎 | 本多 孝好 | 村上 春樹 | 東 直己 | 東野 圭吾 | 松本 清張 | 桐野 夏生 | 桜井 亜美 | 森 絵都 | 森見 登美彦 | 横山 秀夫 | 歌野 晶午 | 池永 陽 | 沢木 耕太郎 | 浅田 次郎 | 湯本 香樹実 | 瀬尾 まいこ | 灰谷 健次郎 | 田村 裕 | 白川 道 | 白石 一文 | 盛田 隆二 | 真保 裕一 | 石田 衣良 | 福井 春敏 | 笹生 陽子 | 綿矢 りさ | 荻原 浩 | 西田 征史 | 豊島 ミホ | 赤井 三尋 | 遠藤 周作 | 重松 清 | 野沢 尚 | 鈴木 貴之 | 関口 尚 | 雫井 脩介 | 高野 和明