幽霊人命救助隊
著者:高野 和明
刊行:2004年4月
評価:★★★★★★☆☆☆☆ 6点
ストーリー:浪人生の高野裕一は何故か断崖絶壁にしがみついていた。いつまで続くか解らない絶壁をやっと登りきった裕一は、頂上で3人の男女と出会った。そして、ここは天国だと告げられる。思い出した、僕は受験に失敗して自殺したんだ。他の3人も自殺経験者だった。裕一が自分の自殺について思い出していると、空から誰かがスカイダイビングで降りてきた。4人の前に降りたダイバーは、自分は神だと言った。さらにここは天国じゃないそうだ。神が4人に出した天国行きの条件は、下界に下りて四十九日以内に自殺志願者100人の命を救うこと。地上に下りた4人は、必死の救出活動を開始した。それぞれに色んな悩みや不幸を抱えた自殺志願者を、自殺経験者達があの手でこの手で説得する。時には自分の自殺を後悔しながら・・・。
感想:それにしても色んな自殺志願者がいるものだ。孤独、疎外感、リストラ、いじめ、育児疲れ、病苦、借金苦・・・。恐らくこの作品は自殺予備軍に対する「死ぬな」というメッセージなのだろう。だから様々なシチュエーションを用意して、一人でも多くの自殺予備軍に対して「同じだ」と思ってもらおうとしているのではないか。でも、正真正銘の自殺志願者がこの作品を読んだら、どんな思いを抱くだろうか。
私を含め、誰だって一度位は「死にたい」と考えたことがあるんじゃないだろうか。もちろん、考えるだけの人と本当に自殺する人の間には大きな差があると思うけど、もし「死にたい」と考えていたときこの作品を私が読んだとしたら、私は救われただろうか。答えは「No」だと思う。恐らく救われない。それどころか視野が狭くなっているであろうその時の私は、反感すら覚えるかもしれない。「物事はこんな単純じゃない、何が解る」と。真の自殺志願者なら、尚更ではないだろうか。
でも、自殺志願者の置かれた状況を客観的にみると、殆どの場合きっと「こんなに単純」なのだろう。辛ければ病院に行けばいい、時には逃げたっていい、誰かに打ち明けることは恥ずかしいことではない。たったこれだけのことなのだ。たったこれだけのことに気付けないのだ。たったこれだけのことで自殺者志願者を救えるのだ。それが難しいのだけれど。
でも、この作品を読んで、私の自殺に対する考え方は少し変った。乱暴な言い方をすれば「死にたいヤツが死にたい理由は結局そいつにしか解らない」と思っていたけど、理由は解らなくてもその人の置かれた状況を少しだけ変えてあげることは出来るかも知れない。自殺志願者を救うことができなくても、それ以外の人達の考え方を少しでも変えることが出来るのなら、この作品の意義は大きいと思う。
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