森見 登美彦

太陽の塔

太陽の塔 (新潮文庫)

著者:森見 登美彦

刊行:2003年12月

評価:★★★★★☆☆☆☆☆ 5点

ストーリー:現在の私は「休学中の五回生」という、大学生の中でもかなりタチの悪い部類に属している。あらゆる意味で華がない。そもそも女性とは絶望的に縁がなかった。私の周囲に集まった男達とともに、我々は男だけの妄想と思索によってさらなる高みを目指して日々精進を重ねた。だが三回生の夏、私はつい抜け駆けをした。いわゆる恋人を作ってしまったのである。だが彼女である水尾さんは残念なことに一つの大きな問題を抱えている。彼女はあろうことか、この私を袖にしたのである。

感想:この小説を女性が読めば、「完全勘違いストーカー物語」となってしまうだろう。文庫の巻末に解説で登場する本上まなみ氏は好意的に主人公を評価しているが、もし自分が水尾さんの立場だったら、同じように思えるだろうか? (余談ですが、随分前に私は少しだけ、こんなにメジャーになる前の本上さんとお仕事をしたことがあります。とっても綺麗で知的で、少し人とは違う感性を持った素敵な方でした。そんな本上さんなら、あるいは本当にこの主人公を受け入れてしまうのかも・・・)

でも男の立場からみれば、この主人公の気持ちがわかるところもある。特にモテない奴ほど解るのではないだろうか。もちろん振られた元カノを観察するなんてことを、本当にやる人間なんて殆どいないと思うけど。

この主人公はプライドが異常に高いくせに、自分に自信がないのだ。だから同じ人種の者とだけ集まり、孤高の硬派を気取って傷付かないようにしている。「彼女が出来ないのではありません。私のレベルに見合う女性がいないのです」オーラを撒き散らしているつもりでも、それが強がりなのは明らか。だから初めて彼女が出来たとき、その彼女に溺れて、思い出すと恥ずかしさで叫びたくなるようなことを言ったりやったりしたであろうことは簡単に想像できる。

正直に言うと、私にはこの主人公の気持ちが解る。もし大学時代に知り合っていたなら、きっと友達になれただろう。私も女性に対するオクテな自分を「硬派」という言葉でごまかしていた。それなりに楽しい大学生活を送ったが、「もっと素直になったら良かった」と思わないこともない。でも、もし今大学生に戻ったとしても、同じようなことを繰り返すのではないか。だって、基本的に苦手なものは苦手なのだから。ただ、自己弁護として言わせてもらえば、私はこの主人公ほどの勘違い野郎ではなかった。・・・と思う。

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