瀬尾 まいこ

天国はまだ遠く

天国はまだ遠く (新潮文庫)

著者:瀬尾 まいこ

刊行:2004年6月

評価:★★★★☆☆☆☆☆☆ 4点

ストーリー:今度の決意は固い。本当に終わりにするのだ。うまくいかない仕事に追われるのも、くだらない人間関係でぐだぐだ悩むのも、そして、そうやって些細なこと考えすぎる自分を責めるのにも疲れた。日本海近くにある寂れた村のくたびれた民宿で、私は大量の睡眠薬を飲んだ。目覚めは爽快だった。失敗したんだ。死ねなかったんだ。どうしよう。でももう死ぬのは嫌だ。そう考えていると、民宿の田村さんが起こしに来た。田村さんは大雑把な人だ。私はここで暮らす田村さんを羨ましいと思いはじめた。でも、気付いてしまった。自分の居場所はここには無いって。

感想:だいたい想像した通りのストーリー&結末だった。その分安心して読めた。

冷たい言い方だと自覚しているけど、私は他人に迷惑をかけない自殺は自由だと思っている。全く他人に迷惑をかけない自殺なんて有り得ないことは分かっている。でも、生きていく力の強い人がいるように、生きていく力がどうしようもなく弱い人だっているはずだ。心の病と言ってもいいかもしれない。生きて行こうという意志の力が弱くなる心の病だ。「死んだ方が楽だ」という考え方が絶対間違っているなんて、どうして他人が言えるのだろう。

とは言うものの、自殺の無い世界が有る世界よりも素晴らしいという考え方は同感だ。みんなが楽しく暮らせる世の中の方が良いにきまっている。そして死ぬほど悩んでいたことが、環境が変わるだけで全然たいしたことじゃなくなるってことも、確かにあると思う。この作品のように。

田舎に行けば時間の流れがゆっくりで、人はみんな大らかで、自然を体全体で感じることができて、自分の悩みがちっぽけに思えて、だから自殺をやめましたって、現実はそんなに単純じゃないけど、思い切って環境を変えてしまうのって大切だと思う。それでダメでもどうせ最初は死ぬ気だったのだから、たいして影響は無いはずだ。それから死んでも遅くない。ただ、悩みの真っ只中にいると、環境を変えるってこと自体が途方も無く難しく思えてしまうからやっかいだ。

この主人公は運良く環境を変えることに成功した。でも、折角環境が変って考え方も変ったのに、また田舎を離れて前と同じところへ戻っていく。しばらくすると、多分また悩むようになるだろう。人間はそんな簡単に変われない。でも、今回のことで受け流したり切り替えたりする術を学んだかも知れない。なら次は、「死にたい」と思ってもそれを簡単に実行できないはずだ。本当に死にたいという人を私は止めたりしないけど、こんな風に死にたいと思う人が減って、そしてそれに少しでも自分が役立っていれば良いななんて、勝手なことを思ったりする。

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