桐野 夏生

I'm sorry,mama.

I’m sorry、mama. (集英社文庫 き 16-2) 

著者:桐野 夏生

刊行:2004年11月

評価:★★★★★☆☆☆☆☆ 5点

ストーリー:松島アイ子は両親の顔も名前も知らないまま娼婦の置屋で育てられ、やがて福祉施設に預けられた。30年以上の時が過ぎ、大人に成長したアイ子。アイ子はそれまでの人生で、盗みや放火、殺人などの悪行を繰り返して生きて来た。汚れたノートを消しゴムで消して綺麗にするように、自分の過去を清算するため何の躊躇いも無く関わった人間を処分していく。救いようのない邪悪で残忍な女。そんなアイ子の宝物は箱に入った白い靴だった。母親の形見の、古くて汚れたボロボロの靴。

感想:久しぶりに桐野夏生の作品を読んだ。相変わらずマイナスオーラ全開の内容。これだけ狂った人間を描き続けて、よくおかしくならないものだと思う。いつも禍々しいことを考えていれば、きっと精神もドロドロになっていくだろうに。

桐野夏生は私の好きな作家の一人。ただ、残念なことに「柔らかな頬」以上の作品には出会っていない。これまでかなりの数の桐野作品を読んだけど、「柔らかな頬」が一番衝撃的だった。本作も「柔らかな頬」を越えることが出来なかったが、いつかそれを越える素晴らしい作品を書いて欲しいと思う。

「他人に理解されることをあきらめた人間が持つ孤独。でも、心の奥底では『誰か分かってくれる人に出会いたい』と願っているからこそ感じる孤独」。これが私が抱く桐野作品の本質だ。自分を分かってくれる人間の存在を諦め切れない。それを求めながら、狂気を繰り返す人間。どんなに残忍な人間でも、他者を求め彷徨うのだ。そんな心の悲しみが行間に滲んでいるから、桐野作品は単なるクライムノベルで終らないのだと思う。桐野作品で描かれる「罪」は「crime」ではなく「sin」だと感じる。罪を犯す人間の愚かさと救いを求める人間の弱さ。それを感じることができるからマイナスオーラが溢れていても、また桐野夏生を読んでしまうのだ。

柔らかな頬〈上〉 (文春文庫)

| | コメント (0) | トラックバック (0)

その他のカテゴリー

さだ まさし | むよーのよー(意味の無い独り言) | サンプラザ中野 | ヒキタクニオ | 三崎 亜記 | 三浦 綾子 | 三田 誠広 | 三羽 省吾 | 中場 利一 | 乃南 アサ | 五十嵐 貴久 | 井上 靖 | 井岡 瞬 | 今野 敏 | 伊坂 幸太郎 | 伊集院 静 | 佐藤 多佳子 | 光原 百合 | 劇団ひとり | 加納 朋子 | 原 宏一 | 古処 誠二 | 司馬 遼太郎 | 吉村 達也 | 垣根 涼介 | 夏目 漱石 | 多島 斗志之 | 大石 圭 | 天童 荒太 | 太宰 治 | 奥田 英朗 | 宮本 輝 | 宮部 みゆき | 小川 洋子 | 小杉 健治 | 山田 悠介 | 川上 健一 | 川端 康成 | 市川 拓司 | 帚木 蓬生 | 志水 辰夫 | 恩田 陸 | 是枝 裕和 | 朝倉 卓弥 | 木堂 椎 | 本多 孝好 | 村上 春樹 | 東 直己 | 東野 圭吾 | 松本 清張 | 桐野 夏生 | 桜井 亜美 | 森 絵都 | 森見 登美彦 | 横山 秀夫 | 歌野 晶午 | 池永 陽 | 沢木 耕太郎 | 浅田 次郎 | 湯本 香樹実 | 瀬尾 まいこ | 灰谷 健次郎 | 田村 裕 | 白川 道 | 白石 一文 | 盛田 隆二 | 真保 裕一 | 石田 衣良 | 福井 春敏 | 笹生 陽子 | 綿矢 りさ | 荻原 浩 | 西田 征史 | 豊島 ミホ | 赤井 三尋 | 遠藤 周作 | 重松 清 | 野沢 尚 | 鈴木 貴之 | 関口 尚 | 雫井 脩介 | 高野 和明