中場 利一

ノーサラリーマン・ノークライ

ノーサラリーマン・ノークライ (幻冬舎文庫 な 8-2) 

著者:中場 利一

刊行:2004年3月

評点:★★★★★★☆☆☆☆ 6点

ストーリー:金子哲也は銀行マン。合併で銀行は大きくなったが、哲也は飲み込まれた側。そして出身大学による身分も下の方。心の中では毎日のように「辞めたい」と呟いていた。ある日哲也は立ち飲み屋で幼馴染のサージと再会する。自由気ままに柵の外で生きるサージ。不平不満を言うくせに柵の中にいる哲也。外は危険だと知りながら自由を選んだサージ。結局最後には安全な中に逃げ込んでしまう哲也。でも、歯を食いしばって頑張っている。ノーサラリーマン・ノークライ。泣かないサラリーマンはいない。哲也もその一人だ。

感想:最後まで哲也が勤める銀行の名前は出てこなかったが、その他の銀行はバンバン実名で登場していた。銀行だけでなく企業名も。それもあってサラリーマンの悲哀がリアルに伝わってくる。

哲也のように「辞めたい。いつか辞めてやる」と思いながら会社にしがみ続けるサラリーマンは多いと思う。不満はあっても自分で何かを始めたり、何かを変えるほどのエネルギーは持っていない。自由に明るく力強く生きているサージと比べると、何てつまらない人生かと悲しくなってくる。と同時に辛くもある。私もどちらかというと哲也側の人間だからだ。

救いは、「辞めたい」と言いながらでも哲也が仕事を頑張っているところ。最初は無能サラリーマンかと思っていたけど、そんなことない。「いつも辞めてやると思うくせに、歯を食いしばって頑張っている。手を抜く奴は嫌いだし、適当に流して仕事をこなす奴の言うことをウソくさく感じてしまう」。みんな悩みながら、自分に言い訳しながら、そんな自分に惨めな思いをしながら、それでも頑張っているのだなぁ。泣かないサラリーマンはいない。そして悩まないサラリーマンもいないはずだ。

哲也やサージ以外の登場人物達も、嫌な面と良い面の両方を持っていて、人間臭かった。私は人を嫌いになるとその人の嫌な面しか見えなくなってしまうので、反省しなければいけない。それじゃサラリーマンとしてやっていけない。「辞めてやる」と思っても頑張ることを辞めてはいけない。逃げちゃダメなんだ。現実の世界では上手く行かないことの方が多いけど。

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