光原 百合

十八の夏

十八の夏 (双葉文庫)

著者:光原 百合

刊行:2002年8月

評点:★★★★★★☆☆☆☆ 6点

ストーリー:花をモチーフにした短編集。

「十八の夏」。4月から浪人生となる三浦信也は、春休みのある日、川原に腰を下ろしてスケッチする年上の女性と知り合った。小生意気な妖精ティンカー・ベルのような彼女の部屋には4つの朝顔の植木鉢が並んでいた。彼女はその朝顔にそれぞれ「お父さん」「お母さん」「僕」「私」と名前を付けていた。

「ささやかな奇跡」。妻に先立たれた水島高志は、小学生の息子を連れて大阪に越してきた。そこで小さな書店を営む佐倉明日香と知り合う。明日香も過去に辛い別れを経験していた。そしてある秋の日、金木犀の香のおかげで親子はちょっとした勘違いとささやかな奇跡に出会った。

「兄貴の純情」。お袋の胎内から背丈とかバイタリティとか情熱とかの取り分を皆かっさらったような兄貴が恋をした。その相手は俺の中学時代の恩師、前島先生の家の美枝子さん。でも兄貴は勘違いしていた。ちょうど「ヘリオトローブ」にもう一つ「キダチルリソウ」という名前があるように、美枝子さんは「おねーさん」でありながら「おかーさん」だったのだ。

「イノセント・デイズ」。妻の家族と塾を経営する栂野浩介のところにかつての教え子 相田史香が訪ねて来た。少女から美しい女に成長して。昔、史香のまわりでは不幸なことが続いた。そのため今の史香は刹那的な生き方をしているようだった。ある日浩介を呼び出した史香は、過去の不幸の秘密を浩介に告げる。自分は夾竹桃のようなものだと。

感想:ついにやってしまった。最初の2,3ページ読んだ時点で「ん?」って思った。それでも読み続けて10ページにも届かない段階で本棚を調べた。やっぱり有りました。同じタイトルのハードカバーが。大分昔に読んだ本を、気付かず文庫本でまた買ってしまいました。こういうことが無いように、感想を付け始めたのに。感想を付け始める前に読んだ作品だったから・・・。この分だとまたやってしまうかも知れない。

何となくストーリーは覚えているけれど、折角だからもう一度読み返してみた。改めてなかなか面白い本だと思う。私的には表題作「十八の夏」が良かったと思う。少年が大人へと成長するひと夏の物語。かなわなかったこの恋は、信也の胸にどんな形で残るのだろうか。「素敵な大人になるのよ」と書かれた彼女からの手紙。俺ならきっと自分の若さを恨めしく感じただろう。時間が経たないとその言葉を自分の中で消化できない。それほど私は立派な人間じゃないから。あと、「兄貴の純情」の兄貴のキャラが良かった。弟とのコンビで、また別の作品に登場して欲しいと思う。

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