司馬 遼太郎

燃えよ剣

燃えよ剣 (上巻) 

著者:司馬 遼太郎

刊行:1964年

評点:★★★★★☆☆☆☆☆ 5点

ストーリー:武州多摩石田村の“バラガキ”土方歳三は、ある夜、初めて人を斬った。その夜以来、歳三の太刀筋が変わる。時代は幕末。開国派、尊王派、攘夷派、佐幕派、様々な思想が各々の信念で語られるなか、歳三は同じく天然理心流の近藤勇、沖田総司らと共に幕府の浪士徴募に応じて上洛し、「新撰組」を組織する。近藤を局長に据え、自らは副長として新撰組を最強の組織とすることのみに邁進し、策をめぐらし、時には仲間を陥れ、人を切りまくる歳三。やがて、寄せ集め集団だった新撰組は、幕末最強の剣客集団へと変わっていく。めまぐるしく動く時代の中でも、歳三はぶれることなく「喧嘩師」としての生涯を貫いた。

感想:新撰組副長、土方歳三の生涯がほぼ忠実に描かれている。若干作者の脚色も入っていると思われるが、「小説」というよりも「伝記」っぽい。それだけに時代の流れに合わせて、淡々と物語が流れていく。

歳三は目的のためには手段を選ばない人物だったようだ。自らの理想や考えを成すためには、恐ろしいほどの執念をみせている。同時にやさしい人物でもあった。その優しさの示し方が無骨すぎるので、仲間達にどれほど伝わっていただろう。ただ、沖田総司は十分に分かっていたと思われる。函館に渡ってからの歳三は、幕府軍の負けと自分の死を避けることのできない運命として受け入れている。だから新撰組結党以来の生き残りである斉藤一らを生かそうとした。自分を慕う市村鉄之助のことも。鬼のような厳しさだけでは人はついてこない。新撰組という組織を作り上げるには、このような歳三のキャラクターが大きな要素になっていたことが分かる。

組織のNo.1とNo.2。どちらのほうが歳三にふさわしかったのだろうか。近藤の下についていた時も、近藤と別れ自ら兵を率いた時も、いずれでも歳三は素晴らしい才能を発揮している。このような人物は稀ではないだろうか。知識と実力と人格、そして信念。それら天賦の才が備わっていたということだろう。ただ、今の時代の「理想の上司」としては、かなり厳しすぎるような・・・。

あと、物語の途中で新撰組の組織表が記されているが、その中に「吉村貫一郎」の名前がある。「壬生義士伝」の吉村貫一郎だ。私は「吉村貫一郎」が実在の人物だとは知らなかった。驚きと共に「壬生義士伝」の感動が蘇って来た。吉村貫一郎の物語も、「伝記」だったのだろうか。

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