遠藤 周作

深い河

深い河 (講談社文庫) 

著者:遠藤 周作

刊行:1993年6月

評点:★★★★★☆☆☆☆☆ 5点

ストーリー:亡くした妻の転生した姿を求めて。満たされない人生の意味を問うために。自らの信じる神を探して。

様々な理由で人はインドへと向かう。そして、生と死が隣り合わせで存在する母なる河ガンジスのほとりに佇む。輪廻転生からの解脱を願って、ガンジスへ無数の人々が沐浴に訪れる。ある者は最後の時を迎える場所としてガンジスを目指して旅をする。

人は本当に転生するのか?祈ることで魂は救われるのか?神は存在するのか?神とはいかなるものなのか?人々の問い掛けを沈黙で受け止め、深い河はただ流れる。そして今日もガンジスのほとりでは死者が焼かれ、その灰が流され、その流れの中に人々は身を沈め、口をすすぎ、ただ祈り続ける。救われるために。

感想:多くの日本人がそうであるように、私も宗教に対してあまり関心が無い。家には仏壇があって、正月には神社に参拝して、クリスマスが来たら普通に祝う。冷静に考えると節操が無い行為だけど、正直に言って全く違和感が無い。そんな私にとっては、この作品はかなり難しいものだった。

扱うテーマが物凄く高尚なため、最初から明確な答えを求めてなかった。やはり作者も明確な答えは用意していない。そんな中で、ただ一人だけ明確な思想を持った人物がいた。教会から「異端」とされた大津だ。彼は自分の中に確固たる「神」を持っている。その思想故に教会から異端視されるのだが、彼はその考えを改めようとはしない。「さまざまな宗教があるが、それらはみな同一の地点に集まり通ずる様々な道である。同じ目的地に到達する限り、我々がそれぞれ異なった道をたどろうとかまわないではないか」。

現在、世界のあちこちで起こっている紛争は、宗教的対立が原因となっているものも多い。信じれば信じるほど原理主義に傾き、他の宗教を異端とみなして排除しようとする。同じ宗教でも宗派が違うという理由で「敵」となる。自分の信じるものだけが唯一の「神」なのか?その神は自分を信じない者達を「殺せ」と命じるのか?私と同じように多くの日本人が疑問に感じていると思う。だから私は宗教というものに対してあまり良いイメージを持っていない。

でも事実として、この作品で描かれるインドの人々は、ヒンズー教によって確かに魂を救われている。インドの人々の大部分はヒンズー教徒で、皆、日本人には考えられないほど熱心な信者だろう。同じ神を崇拝するインドの人々。そのインドでは「カースト」という絶対的なヒエラルキーが存在し、多くの人々が道端で死んでいく。彼らの信じる「神」とは何なのだろうか。

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