終着駅
著者:白川 道
刊行:2004年10月
評点:★★★★★☆☆☆☆☆ 5点
ストーリー:関東将星会の大幹部 岡部武は、若い頃、心無い一言で父親を死に追いやり、自分が運転するバイクの事故で恋人を失い、その虚無感に覆われて生きてきた。「あなたには生きている匂いがしない」。ある日偶然出会った目の見えない少女は岡部にそう言った。少女の純粋な心に触れるうちに、岡部は徐々に生きる意味を見出しかける。また少女も失明して以来閉ざしてきた心を、岡部に対して開いていった。少女のために足を洗う覚悟を決めた岡部。だが、チンピラの放った凶弾が岡部を襲う。朦朧とする意識の中で、岡部はある場所を目指して電車に転がり込んだ。少女に「愛している」と告げる最もふさわしい場所。
感想:白川道の作品を読むのは、「天国への階段」につづいてこれで2作目。「天国への階段」でも感じたけど、物凄く「惜しい」気がする。言葉を変えると「もうちょっと」って感じ。この「終着駅」では大きく分けると二つの物語が、互いに絡み合って進行していく。「心に傷を持つ者同士の純愛」と「裏切りが渦巻くヤクザ世界の抗争」だ。私が「惜しい」と感じたのは「純愛」の方。正直に言って「抗争」のストーリーは非常に引き込まれたけれど、「純愛」のストーリーにはあまり感情移入できなかった。「純愛小説」なら、他に素晴らしい作品は沢山あるように思う。
この「終着駅」と「天国への階段」は、結構似ている部分が多いように思う。北海道が重要な場所として登場したり、男同士の友情だったり、天涯孤独の主人公だったり、純愛だったり、父親と息子の関係だったり。似ているから、「天国への階段」でも感じたように「惜しい」って思ったかも。
「抗争」のほうは、緊張感や友情、忠義が上手く描かれ、主人公の背負ってきた人生を背景に、読み応えのあるものだった。「そんな無骨なアウトローが目の見えない少女と純愛に落ちる」、そして「生きる意味を見付ける」という展開も良いと思う。それだけに、もっと「純愛」部分が上手く表現されていたら・・・。だから「惜しい」のだ。
この作品の「終着駅」は、苫小牧だった。私も苫小牧には一度行った事がある。苫小牧の海も見た。私の記憶に残っている苫小牧の海は、この作品のエンディングにふさわしい雰囲気を持っていた。濃紺の海と厚い雲と、水平線に立つ光の柱。寂しげだけれど、どこか希望を感じさせるその情景が浮かんでくる様だ。・・・だから「惜しい」。
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