恩田 陸

六番目の小夜子

六番目の小夜子 (新潮文庫) 

著者:恩田 陸

刊行:1998年8月

評価:★★★★★★☆☆☆☆ 6点

ストーリー:その高校には「サヨコ」と呼ばれる伝説があった。卒業式の日にその年の「サヨコ」が次の年の「サヨコ」へ、誰にも気付かれずにそっと鍵を渡す。鍵を渡された者は、一年間誰にも自分が「サヨコ」だとは気付かれずに過ごさなければならない。その年の「サヨコ」と次の年の「サヨコ」にしか解らずに、毎年その鍵は手渡されていく。そして3年に一度、その年の「サヨコ」はある役目を果たさなければならなかった。そして今年はその役目を果たす「六番目のサヨコ」が現れる年。そんな年の4月、津村沙世子という美しく謎めいた転校生がやって来た。

感想:不思議な物語だった。「サヨコ」とは何なのか? 誰が始めたのか? 誰が陰で「サヨコ」を続けさせているのか? 「サヨコ」を続けることでどんな意味があるのか? そして本当の「サヨコ」は誰なのか? 最後まで読むと何となくその答えが解りますが、果たしてそれが正解なのか、自信がありません。

でも、この物語の本当に素晴らしいところは、高校生活という素晴らしい青春の時間を生き生きと描いているところではないでしょうか。素敵な高校生活がそこにあって、登場する高校生たちも明るく生き生きと青春を謳歌しているにもかかわらず、「サヨコ」というホラー要素があらゆるところに散りばめられている。でも、その「サヨコ」でさえ、彼らの高校生活をより輝かせるものでしかなかったような気がします。

受験、恋愛、友情、クラスメート、相談、内緒話、イベント、寄り道、同性への憧れ、等々。誰もが経験する、そして経験した者にとってはとても懐かしい思い出が、この物語にはつまっています。私も読んでいて、自分の高校生活を思い出してしまいました。ただ、私は彼らと違ってそれ程頭が良くなかったことが、残念です。

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ネバーランド

ネバーランド (集英社文庫) 

著者:恩田 陸

刊行:2000年7月

評点:★★★★☆☆☆☆☆☆ 4点

ストーリー:ど田舎の伝統ある男子校。その一角を占める古い寮、松籟館。高校2年の冬休み、3人の少年、美国、寛司、光浩は、帰省せずに寮で過ごそうとしていた。3人しか残っていない広い寮は、いつもと違う雰囲気を見せる。そこへ通学組の統も頻繁に現れるようになり、多くの時間を4人で過ごすようになった。当初の4人の微妙なバランスは、時間が経つにつれてそれぞれのキャラクターを理解した関係に変わっていく。ある夜、統が過去のトラウマを告白した。それが呼び水となったように、4人がそれぞれに抱える心の闇が徐々に明らかになっていく。各々の秘密や思いがけずおこる出来事に時に心を乱されながら、それでも4人は松籟館での冬休みを満喫していた。

感想:(私が知る範囲の)恩田さんらしい作品だった。普通のストーリーの中に、何となく不思議な感じが漂っている。ただ、残念ながらあまり感情移入できなかった。

私は男子校ではなかったが、かつて過ごした「高校生活」というものが描かれているので、懐かしく思うところも多々あった。私は寮生活でもなかったが、普段と違う環境の中で友人との新たなバランス関係に戸惑ったこともある。酒盛りで騒いだり、思いがけない告白を聞いて普段の友人からは想像できない影を突きつけられたことも少しは経験した。にしても、本書の4人が背負っている秘密は重すぎる。特に光浩と統が抱える影は、普通なら人格が壊れてしまうようなものではないのか。その様な告白を聞きながら、次の日には普段と変わらず互いが接しているところに、少々違和感を感じた。普段と違う生活の中で、普段では知りえない友人の秘密に触れ、更なる友情が芽生えるというのは分かるけど、ちょっとその「秘密」がリアルを超えすぎてないだろうか。4人ともせめて寛司程度の秘密であったなら、共感できたかも知れない。ストーリーとして平凡すぎるかも知れないが、少なくとも違和感は無かったような気がする。逆にここまでの秘密を用意するなら、もっと違った展開やエンディングでも良かった気がする。秘密が非日常過ぎるのに、ストーリーは日常過ぎる位日常だったというのが最後まで気になったのは私だけだろうか。

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図書室の海

図書室の海 (新潮文庫) 

著者:恩田 陸

刊行:2002年2月

評点:★★★★☆☆☆☆☆☆ 4点

ストーリー:恩田陸作品の「予告編コレクション」のような短編集。

「春よ、こい」。卒業式の朝、二人の少女はデジャ・ヴを繰り返して何度もその朝を迎える。

「茶色の小瓶」。経理課の三保典子は、ロッカーの茶色の小瓶を手にとっては、密かに笑みを浮かべていた。なぜか見ている人を不安にさせる奇妙な笑みを。

「イサオ・オサリヴァンを捜して」。イサオ・オサリヴァンは優秀な兵士だった。ある日突然イサオ・オサリヴァンは去っていった。イサオ・オサリヴァン。私の父。

「睡蓮」。「睡蓮の下にはきれいな女の子が埋まってるんだよ」。最初にそう言ったのは稔だったのか亘だったのか。いつかわたしにも睡蓮は咲くかしら。

「ある映画の記憶」。潮が満ちてくる岩の上で母子が取り残されている。病に苦しむ母は子だけを陸に急がせた。なぜこの映画が私の記憶に刻み込まれたのか、私にはちゃんと解っていたのだ。

「ピクニックの準備」。明日は全校生徒が夜通し行進する「北校鍛錬歩行会」。田中貴子と西脇融。この二人が異母兄弟であることを知っているのは恐らく私だけだろう。私は今回のピクニックで、ある計画を実行しようと思う。

「国境の南」。学生時代によく降りた駅。友人とよく訪れた喫茶店。今はかつての記憶の中の店名ではない。わたしは運ばれてきた水の入ったグラスをじっと見つめる。あの事件と彼女を思い出しながら。

「オデュッセイア」。ココロコが自分が歩けることに気付いたのは随分昔のことである。ココロコには多くの人が住み、ココロコは多くの街を訪れ、ココロコは幾つもの時代を超えて旅を続けた。

「図書室の海」。あたしは主役にはなれない。なのに半年前の卒業式で、先輩から秘密の鍵を渡された。代々語り継がれる「サヨコ」伝説の鍵。

「ノスタルジア」。学生時代の友人から手紙が来た。久しぶりに会おうと言う。先に故郷に戻って来た私。でも、彼女は1年前に死んでいた。私は確かに電話で彼女と話した。電車のベルが鳴り響く。目が覚める寸前に忘れてしった、上手く話せないけれど懐かしい夢。

感想:難しい・・・、というか内容が良く伝わって来ないというか・・・。文学的な感じはするけど、一つ一つの話で言いたいことが良く解らなかった。解説を読んでいると、「予告編コレクションみたいなもの」とあるので、恩田陸の複数の作品の凝縮版ってこと?私は今まで恩田さんの作品はいくつか読んだ。「ピクニックの準備」は私が読んだ「夜のピクニック」の「凝縮版」ってことだろう。に、しても凝縮しすぎてないか?

この作品を読むまで、私は結構恩田陸が好きだった。たまたまなのか、作風も「夜のピクニック」に近い作品が多かったから、この作品のようにホラーとかSFとかを書く作家だとは知らなかった。「夜のピクニック」が結構楽しめたように、本書にある「凝縮版」の「本編」を読めば、今私が感じている「?」な気持ちはすっきりするのだろうか?

夜のピクニック 通常版

夜のピクニック (新潮文庫)

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