伊坂 幸太郎

陽気なギャングが地球を回す

陽気なギャングが地球を回す (祥伝社文庫) 

著者:伊坂 幸太郎

刊行:2003年2月

評価:★★★★★★☆☆☆☆ 6点

ストーリー:嘘を見抜く達人、スリの名人、正確な体内時計を持つ女、演説の天才。4人は失敗を知らない銀行強盗団。入念な下調べをして、緻密な計画を立て、大胆に実行、時間通りに脱出し、設定した逃走経路を正確に疾走して今回も完璧に任務完了・・・となるはずが、思わぬアクシデントが発生。同じく逃走中の現金輸送車襲撃団に遭遇し、何とお金を全て奪われてしまった。だが、ヤツラが立ち去る瞬間、スリの名人は相手の財布をスッていた。それを手掛かりに奪還に動く4人だったが、女の子供のイジメ問題や、仲間の一人の不審な行動や、死体の発見など、なにやらおかしな雰囲気に。騙し合いと裏切りと逆転の末に、4人はお金を取り戻すことが出来るのか?

感想:伊坂さんらしく、陽気でテンポが良く「へぇ~」知識に溢れた作品。たくさんの「へぇ~」知識をどこから仕入れてくるのか知らないけれど、違和感無く作中に散りばめるテクニックは伊坂さんならではと思う。すぐに「へぇ~」知識を持ち出すキャラが必ず存在していて、そのキャラ設定が上手なのだろう。4人の特技が、ギリギリ嘘っぽくて同時にギリギリ本当っぽいところも面白い。

ストーリー展開も面白かった。最初から「怪しい」人物が存在して、結局その人物がキーパーソンだから「どうして最初から分かるような書き方をするのだろう」って普通は思うところだけど、何故かそう思わない。それはネタのバラシ方や、大逆転の展開や、物語の前半に意味無く登場した「アイテム」がことごとく後半に「意味のあるアイテム」に変身するところなど、最初から最後まで流れが計算されているからだろう。

ネタのバラシ方と言えば、伊坂さんは作中で、「顛末=犯人の告白による退屈な説明」と書いている。真相の説明の仕方によって、物語が途端にシラケてしまうってことをなかり意識しているのでしょう。自分で「退屈な説明」と言っている割には退屈することなく顛末が明らかになっていましたし、その後の展開も(若干予想の範囲内ではありましたが)面白かったです。ただ、「陽気に生きるほうが人生は楽しい」と思いましたが、それ以外にあまり胸に迫るモノは無かったような・・・。感動を求めるよりも軽い気持ちで読んで「あー面白かった」で終るなら良い作品ですね。

陽気なギャングが地球を回す プレミアム・エディション

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重力ピエロ

重力ピエロ (新潮文庫)

著者:伊坂 幸太郎

刊行:2003年4月

評点:★★★★★☆☆☆☆☆ 5点

ストーリー:兄 和泉と弟 春が住む町で、放火事件が多発していた。春はやがて放火現場の近くには必ず謎のグラフィティアートが描かれていることに気付く。放火とグラフィティアートの謎を解いて放火犯を捕まえようとするうちに、こんどは和泉が放火現場とグラフィティアートには「遺伝子のルール」が存在していることを発見した。春にのせられるように謎解きに付き合っていた和泉だったが、謎解きを進めるうちにある疑いを抱くようになる。それは家族に起こった過去の悲しい出来事と関係しているのかも知れない。

感想:作者の伊坂幸太郎は、きっと頭が良いのだろう。ストーリーにからめて様々な雑学がいたるところに散りばめられている。ほとんどがストーリーとは関係なくても楽しめる雑学だった。マイケル・ジョーダンの背番号はなぜ23番なのか、ゴリラの子殺し、哺乳類の中で日常的にレイプが行われるのは人間とゾウアザラシとオラウータンだけ、クロマニョン人とネアンデルタール人の違い、桃太郎は本当は親殺しの話、etc。「へぇー」って思うことが多くてそれで楽しく読めたけど、冷静に振り返ってみるとストーリー自体は普通だったような・・・。

兄も弟も父も母も、この家族はとにかく皆がクール過ぎるような気がする。クールすぎて現実感が無いというか入り込め無いというか。例えば弟がクールで兄がそれに振り回されるとか(ちょっとそういう所が無くもないけど)、兄弟の過ちを母親が優しく包み込むとか、まぁ、言葉で書くと安っぽいですけど、そういう人間臭いところも無いと。この家族なりに強く結びついているとは思うけど、ちょっとリアルが感じられなかった。小説なのだから最初からリアルじゃないんだけどね。

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