三崎 亜記

となり町戦争

となり町戦争 

著者:三崎 亜記

刊行:2005年1月

評点:★★★★★★★☆☆☆ 7点

ストーリー:僕がそれを知ったのは町の広報誌に小さく載せられたお知らせだった。となり町との戦争が始まる。でも、僕の日常はなんら変わることが無かった。「今月の戦死者12人」。広報誌のお知らせを読んでも、どこか遠い国での出来事のように身近に感じることができない。そんな変わることの無い日常を送る僕に、不意に「戦時特別偵察業務従事者任命」の通知が来た。自分もこの戦争に直接関わることになるのだ。ところが偵察任務を開始しても、僕の周りは何も変わらない。それでも広報誌で発表される戦死者の数は増えていく。見えない戦争は確実に進んでいた。誰が、何のために始めた戦争なのか解らないまま・・・。

感想:「戦争」が自分の直ぐそばで起こっているのに、自分の日常は何事も無いように普通に過ぎていく。自分が戦争に直接的・間接的に関わっていても、まったくその意識も感覚も無い。すべては自分と関係の無い遠い所での、自分と関係の無い人達の間で繰り広げられる争いなのだ。

「無関心」。この作品のテーマはとても深いと思う。戦争をテーマに書かれているのに、リアルな戦闘シーンが描かれる事は無く、目の前で誰かが殺されることも無く、自分が誰かを殺める事も無く、生き残るための狂気な世界が表現されている事も無い。でも、戦争の恐ろしさは伝わってくる。本当に恐ろしいのは「無関心」なのだろう。例え遠くの国で起こった戦争だとしても、誰もが何かの意味でその戦争に関わっているのだ。自分に危害が加わらないからリアルに感じる必要も無い。そこからくる「無関心」。

「事故や災害を特集したテレビ番組を、眉をひそめながらもわくわくして観てしまうように。自己の絶対的な安全性が確保された場所では、人の災難ですら娯楽になり得るのだ。」リアルに感じることができなくても戦争は確実に起こり、人は死んでいく。一部の人間のための利益誘導のためだけに引き起こされる戦争もある。遠い国の戦争をリアルに感じることの出来ない僕は、この主人公と同じように、自分の町ととなり町との戦争でさえもリアルに感じることが出来ないのかも知れない。

となり町戦争

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