川の深さは
著者:福井 春敏
刊行:2000年8月
評点:★★★★★★★★☆☆ 8点
ストーリー:元警察官の桃山は、ビルの警備員として救いようの無い無気力な毎日を送っていた。ある日そんな桃山の前に、ヤクザに追われて傷だらけとなった少年と少女が現れる。「彼女を守る。それが俺の任務だ」。少年を気遣う少女と命がけで少女を守る少年。二人の姿に自らの無意味な毎日を恥じた桃山は、二人の戦いに引き込まれていく。やがて敵の正体と二人が背負うものの重さが明らかになった時、日本という国の闇が浮かび上がる。
感想:福井春敏の作品は、一度映画を見たことがある。「亡国のイージス」だ。あの映画も面白かった。でも、小説「川の深さは」のほうがずっと面白い。もちろん「亡国のイージス」と「川の深さは」は別の作品で、しかも前者は「映画」を見て、後者は「小説」を読んだのだけど、やはり「映画」と「小説」では「小説」のほうが面白い。と言う事は「亡国のイージス」を小説で読んだら、今回以上の感動があったのでは・・・。
それにしても何てスケールの大きな作品だろう。スケールが大きすぎる位なのにストーリーが大雑把になっていないのは、登場人物たちの背負っているものや覚悟がとても上手く表現されているからなのか。日本の裏側では、実際にこの小説のようなことが起こっているのかもしれない。私達が気付いていないだけなのかも知れない。少なくとも、この小説のようなことがこの先起こったとしても不思議じゃないということは確かだと思う。実際に起こった事件を作品に上手く反映させているので、余計にそう思うのかも。
そんな状況の中で中途半端な状況に留まり、危機感のかけらも無い日本人のイデオロギーに対して「目を覚ませ」と訴えている。単純に自分が正義と信じるイデオロギーを押し付けられても、本能的に拒否反応を起こしてしまうけれど、この作品では信念とか自らを犠牲にしても何かを守ろうとする思いとかが描かれ、単なるイデオロギーの押し付けにはなっていない。この作品の考えが正しいとは言わないが、このままではいけないと考える切っ掛けにはなる。
また、この作品の良さはラストシーンにもあると思う。それまでの激しすぎる戦いに比べて、最後はとても穏やかで未来を感じさせる。わすかな時間だけで会話も交わさずに目だけで語り合ったシーンは、読んでいるだけで波の音が聞こえてくるような美しさがあった。
あと、つまらない発見をした。私はこの小説の第13刷を買ったのだけど、その378Pに「アポリクファ」という単語がある。その他のページではずっと「アポクリファ」と書かれているので多分校正漏れだろう。他の人も気付いたかな?
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