ノルウェイの森
著者:村上 春樹
刊行:1987年9月
評点:★★★★★☆☆☆☆☆ 5点
ストーリー:「僕」ワタナベトオルは、唯一の親友キズキの自殺から他人と距離を置いて接するようになっていた。神戸の町を出て東京の大学に通いだした僕は、ある日街中でキズキの恋人だった直子に再会し、心を引かれるようになる。だが、キズキの死によって心に傷を負っていた直子は僕の元を離れ、都会の喧騒から離れた施設に入所してしまった。遠く離れた直子のことを思いながら、東京で大学生活を過ごす僕。大学の同級生、緑に引かれ始めた自分の気持ちを、直子に対する裏切りだと悩む僕。学生寮で知り合った先輩やその恋人、地図学を専攻していた寮の同室人。37歳になった僕は18年前の、そんなことを思い出して、混乱し、動揺していた。
感想:確かこの「ノルウェイの森」は、当時物凄く売れたと記憶している。1987年といえば私は中学3年生位だったと思うが、全く本と言うものを読んでいなかった当時の私でも、このタイトルは聞いたことがあった。今自分で読んでみて率直な感想は、「どうしてそんなに売れたの?」というものだった。
面白く無かったからじゃない。私の「評点」は5点で確かに高くはないが、珍しく「何年後かにもう一度読んでみたい」と思わせてくれた。後からじわっと染み込んでくる感じの作品だった。以前読んだ村上春樹の「アフターダーク」もそうだった。読んだ直後よりも、読み終わって暫くしてからの方が感じることが多いような気がする。ただ、正直「そんなに多くの人々に本当に共感を起こさせたのだろうか」とも思う。
上手く表現できないけど、この作品が持つ「陰」とでも言うべきものを素晴らしいと受け入れる、そういう思想というか感性というかそういったモノを持つ人が、そんなに多くいるとは思えないけど・・・。この作品のように、良く言えば心に傷を負った、悪く言えば精神を患った人達の物語を読んでいると、いつも、傷を負った人達の方がピュアで美しく、傷を負うことなく世の中を暮らしていける人達が鈍感であるように感じてしまう。この作品でも、自殺が美しい行為のように描かれ過ぎてはいないか。それに直子のことを思いながら過ごしていた「僕」の作中の行動を以って、「究極の恋愛小説」「100%の恋愛小説」と言えるのだろうか。こんな風に、この作品に対しては色んな「?」が浮かんでくる。でも確かに「激しくて、物静かで、哀しい」「限りない喪失と再生を描く」作品であるとも思う。何年後かに読み直してみて、その時にはどう感じるのかが非常に楽しみな作品だった。
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