夏の庭
著者:湯本 香樹実
刊行:1992年5月
評点:★★★★★★☆☆☆☆ 6点
ストーリー:小学6年生の夏休み、人の「死」というものに興味を持った少年3人は、町外れに一人で暮らす老人を観察しようと計画を立てる。老人の「死」の瞬間をその目で見ようと。だけど、少年に「観察」され続けるうちに老人はだんだん元気になっていき、やがて「観察」は老人と少年たちの「交流」に変わって行った。それぞれに何らかの事情や悩みを、小さい世界の中であったとしても抱えた少年たちは、老人との交流によって成長していく。そして小学校最後の夏休みが終わるころ、少年たちは何かを喪い、何かを心に刻む。
感想:「夏」という季節は、少年を成長させる舞台として選ばれることが多い。自分の子供の頃を思い返しても、確かに色んな思い出は圧倒的に夏という季節と共にあることが多いと思う。この物語の少年たちも、小学生最後の夏で大きく成長している。
今までの自分たちの世界では出会うことのなかった老人と交わることで、学校の勉強では学べない沢山のこと学び、今までの自分たちでは思いつきもしなかった物の考え方に触れ、自分たちの知る世界だけがこの世の全てでは無いことを知る。老人は少年たちに色んなことを教えているが、彼らを「子供」として扱っている訳ではない。少年たちとって、大人からそのように扱われることは初めてだったのだろう。例えば、親分と子分のような関係だろうか。子供からの尊敬を受けて、一人寂しく生きていた老人も精気を取り戻している。子供は成長し、老人は再び生きることの意味を見出しているのだ。世の中全てがこの物語のようには行かないだろうけど、この物語をよんでいると異なるジェネレーション同士の交流は大切だということを改めて感じてしまう。
自分とはほとんど関わりの無い人の「死」ではなく、自分のすぐ近くにいる人の「死」によって、少年たちはリアルに「死」というものを感じ、そこから多くの事を学んだのだろう。今は核家族化が進んでしまって、普段あまり会わない自分の祖父や祖母の死を、テレビのニュースで見聞きする他人の死と同じようにしか捕らえられない子供が多いのではないだろうか。色んな世代の人達と触れ合うことで「死」だけでなく、気付かない内に多くのことを学ぶ機会はきっと多いだろう。この少年達のように。
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