人間失格
著者:太宰 治
刊行:1948年8月
評点:★★★★☆☆☆☆☆☆ 4点
ストーリー:主人公の大庭葉蔵は、幼いころから「道化」を演じることにより自分を殺し、人の顔色を伺い、世間とバランスをとって生きてきた。道化を演じながら何時も心の中では冷静に、「世の中と自分のズレ」を認めてきたのである。自我に目覚め、成長していくにつれて、葉蔵は、自身の演じる道化と本来の自分のズレに気付かぬうちに徐々に追い詰められ、苦悩し、堕落した人生を選んでしまう。世間に流され、女にすがり、酒にすがり、最後に薬にすがり廃人のようになったとき、彼は自分自身を「人間失格だ」と断じるのである。
感想:小説という形をかりて、太宰は自身の人生と内面を赤裸々に告白している。この主人公は正に太宰自身なのだろう。道化を演じ続けてきた者が、ここまで自身の内面を明らかにするからには「死」という覚悟があったからだと思う。この小説の発表後、1ヶ月で自殺したというのも理解できる。ただ、この作品を呼んでいると、太宰は世の中を、そして自分以外の人々を、「自分より劣るもの」と捕らえていたように思えてならない。
自分は勉強していないのに何故か成績が良かった、女にもてたがそれが何故だか解らず苦痛だった、道化を演じて周りを楽しませる才があった。これらは「自慢」にしか聞こえない。インテリを気取ることで世間とのズレを勝手に作り出し、その溝を埋めるために「道化」を演じるしか仕方がなく、自分を理解してくれる者つまり自分と同じ思考に至るレベルの者には巡り合わないという孤独に苦しむ。ひどく勝手な話だ。第一、本当に「世間との違いに悩み世間と異なる自分こそに非があるのだ」と感じているのであれば、このような告白文を世に発表せずに死んでいくはずだと思う。
ただ、小説というのはそれを読むときの年齢や精神状態によって受け取り方が変わることも事実。この作品をもし高校生の時に読んでいたら、もっと別の感想を持ったかも知れない。少しは太宰のような部分が自分にもあったと思うからだ。但し、周りとの調和を図らなければならないという苦悩は少なからず誰にでもあることで、それが太宰のような人生を選ぶことの言い訳にはならない。久しぶりに過去の「文豪」と呼ばれる人物の作品を読んだが、正直に言って期待はずれだった。漱石と出会ったときのような感動を期待していただけに、残念。
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