プリズムの夏
著者:関口 尚
刊行:2003年1月
評点:★★★★★☆☆☆☆☆ 5点
ストーリー:高校3年の夏、主人公の植野と親友の今井は街の小さな映画館で出会った不思議な雰囲気を持ったチケット売り場の女性に惹かれ始める。植野と今井は互いに牽制しながらも、その年上の女性が気になって仕方が無い。それは、彼女が美しいにも関わらずどこか怯えた、そして危うい感じがするからだった。ある日ネットで偶然見付けたうつ病の女性の日記。二人は日記を書いているのが彼女ではないかと思い始め、死へと向かう彼女をなんとか救いたいともがくが幼い二人はあまりに無力だった。年上の女性に恋し、ひたむきにその人を助けたいと願う思いは彼女に届くのか・・・
感想:「本当のことは悲しみに属しているんだな。本当のことを知りたいと思っていた僕は真実で傷ついた」。
知りたいと願い続けて、そして知り得た真実は、時に「知らなければ良かった」と思うこともある。年上の美しい女性に対して抱いた恋心は、届かないからこそ偶像化され、必要以上にその女性を美化しすぎてしまう。この物語では年上の女性に対する想いがそうさせているが、これは何も年上に対するものだけではないと想う。同い年だって年下だって、幼いときの恋は、相手を清らかな存在と見なしすぎてしまうことが多いと思う。それは、「そうあって欲しい」という願いにほかならない。初恋や子供のころの恋が何時しか終わってしまうのは、恋する相手の真の姿が、「こうあって欲しい」と願うものとは違うためかも知れない。そんな経験を重ねることで、いつか人は「ありのままの相手」を受入れられるようになるのだろう。
この主人公も、恋する人の真実の姿を知ることで苦しみ、それでも何とか受入れようともがいている。主人公と親友と年上の女性、この3人はこれからどうなっていくのか。恐らく将来、3人は3人とも違う相手を選んでいる気がするけど、それはこの夏の経験があればこそなのだろう。
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