さだ まさし

眉山

眉山 (幻冬舎文庫 さ 8-4) 

著者:さだ まさし

刊行2004年12月

評点:★★★★★★☆☆☆☆ 6点

ストーリー:東京で働く河野咲子は、末期癌の母の看病のため、故郷の徳島に戻ってきた。自らを「神田のお龍」と名乗る母、龍子は、その気風の良さから多くの人に慕われていたが、咲子は父親の存在を知らずに生きて来た。やがて咲子は、母が自分の死後「献体」を希望していることを知り、戸惑う。なぜ自分に黙って・・・。阿波踊りの季節が過ぎ、母の容態は悪化した。やがて咲子は、母の残した手紙を頼りに、父の存在と母の深い思いに辿り着く。

感想:かなり以前、私の先輩が「さだまさしは天才だ」と言ったことがある。そのころのさだまさしが小説を書いていたかどうか知らないけど、その先輩はさだまさしの詩を以って「天才だ」と言ったのだ。その先輩は「永ちゃん命」のロックンローラーだった。

さだまさしの詩は、それだけで「物語」になっていると思う。私がさだまさしの小説を読むのは今回が初めてだけど、詩と同じように「物語」になっていたと思う。阿波踊りのクライマックスで、母と父がすれ違うシーン。祭りの激しさや賑やかさによって、余計に二人の静かな邂逅が染みてきた。最初は、その啖呵がなんとなく作り物のキャラクターに思えたりしたけど、その生き様を最後まで貫いた「神田のお龍」は、単純に「かっこいい」と思う。なぜ「献体」を望んだのかその理由が最後に解った時、「かっこいい」だけではない「女」としての深い愛も感じた。

人の人生まで変えてしまうような啖呵は、口先だけの人間に切れる筈が無い。「私もこんな人間になりたい」とまで厚かましいことは言わないが、せめて「こんな人間に出会いたい」ものだ。でも、どんな素晴らしい人物から出た素晴らしい言葉でも、聴く耳が腐っていると心には響かないだろう。普段からせめてそうならない位にはしておかないと、折角出会った「人物」ともすれ違って終わってしまう。気を付けないと。

あと、映画の「眉山」では、「神田のお龍」は宮本信子が演じている。映画を見た訳ではないけれど、ハマリ役だと思う。

眉山-びざん- (2枚組)

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