その日のまえに
著者:重松 清
刊行:2005年8月
評価:★★★★★★☆☆☆☆ 6点
ストーリー:生と死と、日常の中にある幸せを描く連作短編集。
「ひこうき雲」 岩本隆子。あだ名は「ガンリュウ」。六年二組の嫌われ者だ。そんなガンリュウが入院した。とても重い病気で長い入院になるらしい。クラス全員でガンリュウに寄せ書きをした。でも、書かれた言葉はなんだか違う気がした。
「朝日のあたる家」 朝のジョギングの途中で昔の教え子に再会した。別の元教え子が同じマンションに住んでいるらしい。その夜、同じマンションに住む元教え子 入江睦美が訪ねてきて告げた。「昔私が万引きでつかまったこと、主人には絶対言わないで下さい」。
「潮騒」 佐藤俊治は医者に余命を告げられた後、小学生の頃2年間だけ過ごした街を訪れた。ガキ大将だった「でめきん」を訪ねて、子供の頃よくあそんだ「かもめ海水浴場」へ行った。同級生のオカちゃんが溺れて死んだ場所だ。
「ヒア・カムズ・ザ・サン」 健康診断の結果、母ちゃんは再検査となった。頼りなくハンパな俺はそのことを母ちゃんに問い詰められない。最近母ちゃんはストリートミュージシャンに夢中になった。イイ年こいて。そのミュージシャンに再検査を受けるよう母ちゃんに話してもらおうかと、ハンパな俺は考えている。
「その日のまえに」 僕と和美は、新婚のころ暮らしていた街を訪れた。18年ぶりだ。駅前の街並みはすっかり変わってしまった。でも、僕達が暮らしていたアパートはまだあった。もしかしたら、最後の外泊になってしまうかも知れない旅がもうすぐ終る。
「その日」 「明日、ママに会いに行こう」。二人の息子に僕は言った。もう「その日」はすぐそこまで来ている。その深夜、病院から連絡が入った。すでに日付は変わっている。僕達はもう、その日を生きている。
「その日のあとで」 先月までは胸の底にいつも重いものがあった。やがて僕は重石に触れずに時間を流すコツを覚えるだろう。和美が死んで明日でちょうど3ヶ月という日に、看護士長の山本さんから連絡をもらった。久しぶりに会った山本さんは、和美から預かったという手紙を差し出した。
感想:読み始めは「連作短編?」と思いましたが、「その日のまえに」以降、前半の短編が関係してきて、「なるほど、確かに連作短編」と納得しました。短編同士の関係させかたは、劇団ひとり著「陰日向に咲く」にはかないませんが、前半の短編の「その後」を見ることができ、良かったです。ただ「朝日のあたる家」だけ、全体とどう関係しているのか、良く分かりませんでした。
それぞれの短編の「その後」に注目してしまったのは、私の境遇によるのかも知れません。本作は「生と死」について書かれていて、「生と死」があれば当然「去る者と残される者」がいる訳で、私は「残される者」だからです。まぁ、ほとんどの人達が「残される者」でしょうけど。生きているのですから。
私の父は、私が大学生の時に死にました。余命3ヶ月と言われてから、結局半年以上生きたでしょうか。父に告知はしませんでしたが、最後の半年は凄く濃密な時間を過ごした記憶があります。本作を読んで、それを思い出しました。でも、寂しさや悲しさはありません。「その日のあとで」にもありますが、それを決して残酷なことだとは思いません。本作の「残された者」達も同じです。普通に生活して、ふとしたことで思い出す。涙を流しながらではなく笑顔で。それで良いのだと思います。
花火大会を企画した「でめきん」。いい人です。とってもいい「残される者」です。その花火をいろんな「残される者」が見上げています。その花火を見ながら、笑顔でそれぞれの「去る者」を思い出す。そして次の日からまた、しばらく「去る者」を忘れて普通の生活を送る。「残される者」が幸せなら、「去る者」にとってもそれで良いのだと思います。
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