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症例A

症例A (角川文庫) 

著者:多島 斗志之

刊行:2000年10月

評価:★★★★☆☆☆☆☆☆ 4点

ストーリー:亜左美。高校生。17歳。精神病院に入院する彼女の名は仮名だ。担当医である榊も本名は知らない。美しい亜左美はその言動で病院スタッフを振り回す。榊は亜左美を「境界例」と疑うが、臨床心理士の由起は「解離性同一性障害」(多重人格)だと主張する。その主張を受け入れない榊に、由起は自らをもってその可能性を示すのだった。そしてこの病院の特別室に隔離されている五十嵐は、国の重要文化財に隠された重大な秘密を知っているらしい。その秘密は、この病院の成り立ちにも深く関係しているかもしれない。彼の語る秘密は、彼の妄想、或いは虚言なのだろうか。

感想:この作品は基本的に二つのストーリーで成り立っている。「亜左美という少女は多重人格なのか」というストーリーと、「国の重要文化財に隠された秘密とは何なのか」というストーリー。私の率直な感想として、この2つのストーリーを平行して進行させる意味が分かりませんでした。

「重要文化財に隠された秘密」、そしてそれを語るのは精神病患者。その秘密を知るが故に隔離される患者。なかなか面白い物語でしたが、残念ながらどうもこちらはメインストーリーではないようです。亜左美という美しい少女と由起という臨床心理士、そして精神科医である榊。「多重人格」という受け入れ難い症例を中心として展開する3人の関係が中心に物語は進行していきます。この二つの物語を一つの物語の中に詰め込む必要が、果たして有ったのでしょうか? その必要性も、そして共存させることによる効果も分からないばかりか、どう二つがリンクしているのかすら私には分かりませんでした。

「境界例」とか「分裂病」とか「解離性同一性障害」とか、精神病院が舞台になっているのでそういうワードが出てくるのは当然なのでしょうが、その解説があまりにも医学書っぽいのも気になりました。亜左美をこの3つのどれと判断するかによってその対処の仕方が変わると言われても、その症例の違いの解説が専門的過ぎて・・・

最後に二つのストーリーがどう結びつくのか。そこに注目していたのですが、かなりあやふやなまま終ってしまった気がしてなりません。二つのストーリーを別々に作品にしても良かったのではないでしょうか? 結局最後までそのことばかりが気になって仕方がありませんでした。

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