トワイライト

トワイライト (文春文庫)

著者:重松 清

刊行:2002年12月

評価:★★★★★★★☆☆☆ 7点

ストーリー:昔通った小学校がもうすぐ取り壊される。26年前に埋めたタイムカプセルを開けるために、かつてのクラスメート達が集まった。「のび太」と呼ばれた少年。「ジャイアン」と呼ばれた少年。「のび太」が密かに憧れ、漫画とは違って「ジャイアン」と結ばれた「しずかちゃん」。そして仲間達。タイムカプセルの中には、希望に溢れた未来が詰まっていた。でも、夢は夢のまま終って、大人になった彼等は現実を生きていた。

感想:私はタイムカプセルを埋めたことがありませんが、確か小学生の時、隣のクラスが卒業式の日に埋めていました。「成人する年に掘り返す」って言ってた気がしますけど、どうなったのでしょうか?

成人する年、つまり二十歳にタイムカプセルを開けたとしても、まだそこには未来があると思います。子供の頃より可能性のドアは少なくなっているかも知れませんが、まだまだ夢や希望を抱くだけの時間は残されているでしょう。この小説の彼らは微妙な年齢です。もっと年老いてからなら、素直に昔を懐かしめたかも知れません。もっと若ければかつての夢に刺激を受けて目標を見つめ直すかもしれません。でも彼らは「アラフォー」です。やり直すには少し遅く、諦めるには先が長い。

「のび太」も「ジャイアン」も「しずかちゃん」も、そして「しずかちゃん」のライバル(実際の「ドラえもん」では誰になるのでしょうか?)も、現実に疲れています。そろいも揃って後ろ向きですね。そんな時に無邪気な夢に向き合うのって、かなり辛いでしょう。そんな彼等が再会して、それぞれの不幸な思いが弾けてしまいます。そしてそんな彼等を助けたのはやっぱり「ドラえもん」でした。

「アラフォー」には「アラフォー」なりの未来がある筈です。やり直せないけど新しく始めることは出来ます。彼らは懲りずにまたタイムカプセルを埋めました。次に掘り返す時、彼らの未来はもっと少なく、さらにやり直しがきかなくなっている筈です。それでもタイムカプセルを埋める彼等。それぞれ新しく何かを始めようとしているのでしょう。なら、最初のタイムカプセルは残酷なだけじゃなかったってことです。

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死体を買う男

死体を買う男 (講談社文庫) 

著者:歌野 晶午

刊行:1995年2月

評価:★★★★★★★☆☆☆ 7点

ストーリー:ある小説雑誌に作者名の無い小説が掲載された。「白骨鬼」。この連載第1回を読んだ後、かつて人気推理小説家だった細身辰時はうなり声をあげた。女装した美少年が絶壁から身を投げ、その死体があがらないまま自殺として片付けられるストーリー。江戸川乱歩調の文体で書かれたこの小説の作者は誰なのか? 何を切っ掛けにこの小説を書いたのか? それを確かめるため細身は「白骨鬼」の作者 西崎和哉と会い、ある決心を固めた。この「白骨鬼」は、私の名で世に出されなければならない・・・。

感想:「葉桜の季節に君を想うということ」でも感じましたが、歌野さんの作品は全体の構成が素晴らしい。とてもよく練られていると想います。小説の中の世界(作中作)と現実の世界(作品自体)が平行して進み、最後にこの2つのストーリーを密接に関連させる。そして謎ときを提示するのですが、解かれた謎以上の秘密がそこには隠されている。全ての真相が明らかになったあともう一度最初にある「自序」を読むと、読み出しとはまったく異なる意味を感じることができます。

なぜ細身辰時は西崎和哉の作品を自分のものにしようとしたのか? 西崎自身も自分でその答えを導き出します。普通の作者ならそこで終わりでしょうが歌野さんは違います。西崎が辿り着いた答えは50点でしかありません。基本正解なのですが、本当に大切なパーツが足りません。それは何かと言うと・・・ここでは言えません。

作中作の「白骨鬼」だけでも結構楽しめるので、本作は「一粒で二度おいしい」作品です。まだ映像化されてないようですが、映画やドラマになってもかなり面白いと思います。ただミステリー小説というものは例えどんなに感動したとしても、一度完読してしまうともう一度読み返す気にはなれません。トリックや謎解きが全て解っているから当然なのですが、こんなに面白い作品なのに一度しか楽しめないのはとても残念です。それがミステリー小説の宿命なのですが。一度しか読めないジャンルであるからこそ、クオリティの高い作品に出会いたいという思いは特に高くなります。本作はその思いを満たしてくれました。

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その日のまえに

その日のまえに (文春文庫)

著者:重松 清

刊行:2005年8月

評価:★★★★★★☆☆☆☆ 6点

ストーリー:生と死と、日常の中にある幸せを描く連作短編集。

「ひこうき雲」 岩本隆子。あだ名は「ガンリュウ」。六年二組の嫌われ者だ。そんなガンリュウが入院した。とても重い病気で長い入院になるらしい。クラス全員でガンリュウに寄せ書きをした。でも、書かれた言葉はなんだか違う気がした。

「朝日のあたる家」 朝のジョギングの途中で昔の教え子に再会した。別の元教え子が同じマンションに住んでいるらしい。その夜、同じマンションに住む元教え子 入江睦美が訪ねてきて告げた。「昔私が万引きでつかまったこと、主人には絶対言わないで下さい」。

「潮騒」 佐藤俊治は医者に余命を告げられた後、小学生の頃2年間だけ過ごした街を訪れた。ガキ大将だった「でめきん」を訪ねて、子供の頃よくあそんだ「かもめ海水浴場」へ行った。同級生のオカちゃんが溺れて死んだ場所だ。

「ヒア・カムズ・ザ・サン」 健康診断の結果、母ちゃんは再検査となった。頼りなくハンパな俺はそのことを母ちゃんに問い詰められない。最近母ちゃんはストリートミュージシャンに夢中になった。イイ年こいて。そのミュージシャンに再検査を受けるよう母ちゃんに話してもらおうかと、ハンパな俺は考えている。

「その日のまえに」 僕と和美は、新婚のころ暮らしていた街を訪れた。18年ぶりだ。駅前の街並みはすっかり変わってしまった。でも、僕達が暮らしていたアパートはまだあった。もしかしたら、最後の外泊になってしまうかも知れない旅がもうすぐ終る。

「その日」 「明日、ママに会いに行こう」。二人の息子に僕は言った。もう「その日」はすぐそこまで来ている。その深夜、病院から連絡が入った。すでに日付は変わっている。僕達はもう、その日を生きている。

「その日のあとで」 先月までは胸の底にいつも重いものがあった。やがて僕は重石に触れずに時間を流すコツを覚えるだろう。和美が死んで明日でちょうど3ヶ月という日に、看護士長の山本さんから連絡をもらった。久しぶりに会った山本さんは、和美から預かったという手紙を差し出した。

感想:読み始めは「連作短編?」と思いましたが、「その日のまえに」以降、前半の短編が関係してきて、「なるほど、確かに連作短編」と納得しました。短編同士の関係させかたは、劇団ひとり著「陰日向に咲く」にはかないませんが、前半の短編の「その後」を見ることができ、良かったです。ただ「朝日のあたる家」だけ、全体とどう関係しているのか、良く分かりませんでした。

それぞれの短編の「その後」に注目してしまったのは、私の境遇によるのかも知れません。本作は「生と死」について書かれていて、「生と死」があれば当然「去る者と残される者」がいる訳で、私は「残される者」だからです。まぁ、ほとんどの人達が「残される者」でしょうけど。生きているのですから。

私の父は、私が大学生の時に死にました。余命3ヶ月と言われてから、結局半年以上生きたでしょうか。父に告知はしませんでしたが、最後の半年は凄く濃密な時間を過ごした記憶があります。本作を読んで、それを思い出しました。でも、寂しさや悲しさはありません。「その日のあとで」にもありますが、それを決して残酷なことだとは思いません。本作の「残された者」達も同じです。普通に生活して、ふとしたことで思い出す。涙を流しながらではなく笑顔で。それで良いのだと思います。

花火大会を企画した「でめきん」。いい人です。とってもいい「残される者」です。その花火をいろんな「残される者」が見上げています。その花火を見ながら、笑顔でそれぞれの「去る者」を思い出す。そして次の日からまた、しばらく「去る者」を忘れて普通の生活を送る。「残される者」が幸せなら、「去る者」にとってもそれで良いのだと思います。

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殺人の門

殺人の門 (角川文庫)

著者:東野 圭吾

刊行:2003年8月

評価:★★★★★★☆☆☆☆ 6点

ストーリー:倉持修。幼い頃に出会った彼のせいで、私の人生は完全に狂ってしまった。人生の節目節目、親の離婚、転校、初恋、就職、結婚、その度に倉持は現れた。いつからか私は倉持を殺そうと心に決めた。私の人生を、そして多くの人を不幸にした倉持を。そのチャンスは度々訪れた。でも、その度に私には出来なかった。殺人者になるために必要なものとは何なのだろう。衝動的な殺人ではなく、秘めて抱き続けた思いを本当の行為に変えるとき、人に殺人の門を越えさせるものとは何なのだろうか。

感想:主人公 田島和幸の人生。なんて不幸で悲しい人生なのだろうか。それがたった一人の男によって導かれたものだとしたら・・・。それだけで十分殺意となりそうな気がします。でも和幸にはできなかった。そうさせないことが倉持の不思議な魅力だったのでしょうか。

和幸の人生が変わってしまった大きな理由。もちろんそれは倉持という存在なのですが、和幸自身が彼との関係を切れなかったことが最大の理由だったと思います。「いつか彼を殺すため」だとしても、彼との関係を切れなかった。私なら、「殺そう」と思う前に関係を断つと思います。彼から近寄ってきても、思いっきり拒否します。危ない匂いを漂わせる倉持の誘いに、何度も騙されながらそれでも乗ってしまう和幸の弱さ、愚かさが不幸の根っ子にある気がしてなりません。

でも、関係を断てない、そうすることが出来ないように話が展開して行きます。それが東野さんの凄いところなのでしょう。自分で選んだ人生のはずが、実は他人の掌の上で転がされていたなんて、そしてそれに気付かずにいたなんて、全てが判ったとき人生に絶望してしまいます。その恨みからでなく、そんな死神から逃れたい一身で、人は殺人の門を超えるのでしょうか。

倉持修。彼が悪に心を染める切っ掛けは和幸に対する嫉妬だったのかも知れませんが、私には生まれながらの悪だと思えました。「白夜行」や「幻夜」では女性の「悪」を描いた東野さん。今回は男性の「悪」が描かれていました。正直、女性の「悪」のほうが作品としては楽しめました。それは「悪」の女性は主人公で、「悪」の男性はそうでなかったという違いがあるのかも知れません。ただ、女性の「悪」のほうが、美しく悲しく残酷で深いような気がします。そんな私の考えを覆すような「悪」の男性を主人公にした長編東野作品に、いつか出会いたいと思います。

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ぼくは悪党になりたい

ぼくは悪党になりたい 

著者:笹生 陽子

刊行:2004年6月

評価:★★★★★☆☆☆☆☆ 5点

ストーリー:兎丸エイジは17歳の普通の高校生。父親のいない家庭に育ち、父親の違う弟がいて、仕事でしょっちゅう家を空ける恋多き奔放な母と3人で暮らし、毎日家事全般をこなすという平凡な高校生活を送っている。こんな環境と生活が普通で平凡か疑問を持つ程度に常識もある。そんな母親が長期出張中のある日、弟が高熱を出した。母の友人 杉尾さんに助けを求めたあたりから平凡な僕の毎日は少しずつ崩れていった。母も友達も友達の彼女も、やりたいようにやり生きたいように生きている。僕だけが貧乏くじを引いている。ビバ悪党。ぼくは悪党になりたい。

感想:かなり平凡でない環境に暮らすエイジ君。確かに損な性格をしています。普通の家庭で育てばそうでもないのでしょうが、こんな特殊な面々に囲まれれば、エイジ君のような性格は確実に貧乏くじを引いてしまいます。こんな環境でなくても、誰だって「自分だけが損してる」と感じることはあるでしょう。

私も偶にですがそう感じることがあります。「ありました」って言うほうが正確でしょうか? 周りのヤツラがお構いなしに好き勝手生きてるように思えて、その煽りをこっちが受けてる。なら俺も好き勝手に生きないと損だと思ったことが何度かあります。ちょうどエイジ君と同じように。迷惑掛けられてんだから迷惑掛けて何が悪いって。

いつ頃からでしょうか、あんまりそんなことを感じなくなってしまいました。丸なったということとは少し違う気がしますし、もちろん悪党になりきった訳ではありません。何と言うか、「自分の気に食わないこと以外のこと」にも気付けるようになったってことでしょうか。

確かに他人に不愉快な思いをさせられることは多いです。でもそのことばかりを溜め込むことが無くなりました。良くしてもらえることだってありますし、それなりに皆だって周りに気を使っていることも分かるようになりました。もちろん正真正銘の悪党もいますが、そんな人を見て「俺が損している」と思うよりも「常識ねえなぁ、カッコ悪ィ」と感じるようになりました。まぁ、エイジ君と一緒で「悪党になる才能」が無いってことでしょうね。人間慣れないことや意味のないことで無理しちゃいけません。

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檻の中の少女

檻の中の少女 (角川ホラー文庫 78-17) 

著者:大石 圭

刊行:2008年1月

評価:★★★★★☆☆☆☆☆ 5点

ストーリー:僕は諦めた。そして日陰で生きるという現実を受け入れた。僕の33年の人生はその繰り返しだった。そんな孤独な画家である僕のもとへ、ある日、画商が美しい少女をつれてきた。彼女をモデルに絵を描く僕。やがて画商の提案で少女のヌードを描くことになった。少女の裸体の美しさに衝撃を受ける僕。ついに一線を越えてしまった少女と僕。少女との愛に溺れながら夢中で絵を描き続ける僕。少女さえいてくれたら他に何もいらない。少女は僕の全て、全世界だ。でも、少女と僕の関係は、僕が考える以上に背徳なものだった。

感想:たぶんこの感想をブログにアップした途端に色々な「エロワード」につられて沢山のトラックバックが貼られるのでしょうな。「少女」というワードのせいで、普段以上にグロいサイトも多いだろう。削除のことを考えると今から気が重い・・・。そう、一応断っておくと私はロリコンではない。

ロリコンでない私は、正直に言って途中で本作を読むのをやめようかと思いました。小学生の女の子との性的な関係に溺れるなんて、まったく共感できない。しかも「少女」と「僕」の本当の関係は・・・。それが分かってからも少女を抱き続けるなんて有り得ません。最低です。「道徳から外れたことをしている」という「禁断」という名の魅力に人は逆らえないのかもしれませんが、同じ反道徳行為である「不倫」とかとはレベルが違いすぎます。本能で生きている動物でももう少し理性的なのではないでしょうか。もし私に幼い娘がいたなら、あっさり読むのをやめていたと思います。

と思いつつ最後まで読んだのは、最後に少女と僕がどうなるのか気になったからです。この有り得ない関係の二人に対して作者はどんな最後を用意しているのだろう、どんな破滅が待っているのだろうと。破滅を期待していた僕の想像とは異なったエンディングでしたけど。

これ以上ないほどの「神に対する罪」を犯す「僕」ですが、彼にとって少女との関係は「究極の愛」だったのでしょう。諦めた筈の芸術家としての魂が激しく燃え上がる程の。芸術とエロスは紙一重。というかエロスが人間の芸術を発展させる源泉の一つであることは間違いないと思います。美しいものや汚れのないものに惹かれるのは人間として当然です。男でも女でも大人でも子供でもない代わりに全ての要素を併せ持つ汚れを知らない少女は、彼にとって究極の美の対象だったのでしょう。そこまでは理解できます。でもその「美」が性の対象かというと・・・。作者は本作で描かれる愛を「究極の純愛」と捉えているのかもしれませんが、作者自身が作中の少女をして「自分が生み出した可愛い娘」と語る神経は、私にはやはり理解できません。

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WBC

シーズン中の「候補選手アンケート」に白紙回答した時点で、

既にイヤ~な雰囲気が漂い始めていましたが・・・

今回の中日の対応、「ちょっと待てよ」って感じですねぇ。

結果的に全員辞退となるにしても、もうちょっとあるでしょ、

やり方というか説明の仕方が。

「聞かれてないから答える必要無し」?

「納得できなけりゃそっちから聞きに来い」?

「プロ野球選手は個人事業主」?

正しいかどうかの議論は置いとくとしても協調性ゼロなのは明らかですな。

「選手自身の意思」をやたらと強調してますが、

トップがこれじゃ行きたくても手を上げれないでしょ。

さらにホントに行けない理由がある選手まで

バッシングの対象となってしまうような受け答えして、

監督がそんなでどうすんの?

プロ野球選手ってシーズン中だけ、しかも試合中だけ活躍すれば

それで良いのですか?

「個人事業主」の彼等は、それだけで何億ももらってるの?

違うでしょ?

広告料とかスポンサー料とか、まぁ色々ありますけど、

基本はファンがいるからお給料がもらえるのでしょ?

今回の件でファンの反応見て、それでも「何が悪い」って開き直れるのがスゴイわ。

まぁ一部には落合擁護のファンもいるみたいですけど。

もし今回のWBCが凄く盛り上がって、それで球界全体が潤って、

それが選手達に還元されるとかってなったとき、

今回辞退して、さらに理由も語らなかった選手達はその権利を放棄するの?

義務を放棄しても権利は主張するの?

給食費とか払わないバカ親と同じレベルやん、そんなの。

前回のWBC、すごく感動した。

あれを見て「野球選手になりたい。プロに入って活躍して、日本代表に選ばれたて、世界一になりたい」って思った子供もたくさんいたと思う。

そういう姿を見せるのもプロ野球選手の仕事じゃないの?

WBCに出たくないなら、オールスターもナントカ賞の受賞式もテレビ出演も、全部辞退すれば? シーズンと関係ないんだから。 

そんなヒマがあるなら調整してれば? そういうことでしょ、落合さんの言い分って?

「宮本や上原はいいのか?」って、こういう時は「オレ流」じゃないのですね。

「才能のある選ばれた者がその才能を皆のために使わないことは罪である」的なことを言ったのって誰でしたっけ?

選ばれることを「名誉」ではなく「迷惑」と受け取るような、少なくともそう思われるような態度をみせるのは、正しくないでしょう。どう考えても。

辞退することそのものは決して悪くないと思いますよ、私も。

それ以前のレベルの問題なんですよ、大多数の方々が不愉快に思っているのは。

こんな態度をみせられても、来シーズン中日ファンは球場で応援するのですかね?

オールスターに中日の選手を投票するのですかね?

来シーズンの中日がある意味楽しみです。

身内から思わぬ冷や水を浴びせられましたが、侍ジャパンには頑張ってもらいたい。

あの感動をもう一度味わいたい。

野球でもサッカーでもバレーでもラグビーでも、ホッケーでもゴルフでもテニスでもスキーでも体操でもラクロスでもアーチェリーでも乗馬でも卓球でも、宇宙飛行士でもノーベル賞でも数学オリンピックでも、「日本代表」は応援したいし活躍すれば素直に嬉しいものです。

ほとんどの「日本代表に選ばれることのない人々」も同じだと思います。

そして「日本代表に選ばれる人々」に自分を重ねたりしながら、応援したりすると思います。

そんな対象となるはずの人に「出たくないから、怪我したくないから、本業と関係ないから、辞退します」って姿をみせられてもねぇ・・・

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走るジイサン

走るジイサン (集英社文庫)

著者:池永 陽

刊行:1999年1月

評価:★★★★★★☆☆☆☆ 6点

ストーリー:頭の上に猿がいる。今年69歳になる作次には確かに見える。でも他人には見えない。「この年になって、やっぱり頭がおかしくなったんだろうか」。改めて考えると、きっかけは息子の嫁の京子さんにほのかな恋心を抱いてからのような気がする。

感想:猿を頭の上に乗せたじいさん。設定がかなりシュールだったのでどんな展開になるのかと思って読み始めましたが、内容はその設定から抱くイメージとは異なり、重いものでした。

「老い」をテーマに書かれている訳ですが、自分の老後や自分の親の老後を思い起こされて「うーーーーん」とマジモードで考えさせられます。私はまだ「老人」ではないので想像するしかありませんが、きっと老人も恋をするのでしょう。それが息子の嫁だったとしても、確かに不自然ではありません。私も老人になったら、「自分は家族に疎まれているかもしれない」なんて劣等感を抱くのでしょう。その時に十分な経済力を持っていれば別ですが、そうでなければ肩身の狭い思いをしているかもしれません。そして自分の老いをふとしたことで実感し、確実に進んでいく自身の老いに悲しんだりしてるのでしょう。

まだ若い(つもりの)私には、「老い」という言葉からはネガティブなイメージしか湧いて来ません。本作の主人公 作次も「元気ハツラツ爺さん」って感じではありません。頭に猿なんてファンキーなものをのっけてるくせに。人生の幕がもうすぐ下りようとしている寂しさが漂ってます。今まで一生懸命働いて、一生懸命生きてきて、オンボロだけれど自分が建てた家に住んでいるのに、同居する息子夫婦に気を使って小さくなって生活しています。決して虐げられている訳ではありませんが、自由気ままとは程遠い生活です。世の中の多くの老人がそうなのかも知れませんが、なんだか寂しくなりました。

本作を読んで、イケテル老後をおくるために必要なものは「お金」「恋心(スケベ心)」「あつかましさ」の3つだと思いました。好きに使えるお金を十分に持って、周りの目を気にせず異性に対してうつつをぬかし、楽しいことだけを考えて、好き勝手に生きる。でもこれってなかなか難しいことだとも思います。「お金」はそれまでの努力が必要ですし、あとの二つはハッキリ言って才能が必要です。歳をとってただでさえ後ろ向きになりがちな気持ちを常に前向きに保ち続ける才能が。この3つを併せ持つ人でイメージするのは高田純次でしょうか。むちゃくちゃ楽しく生きてそうですから。あと何十年後には、私も高田純次のようになれているでしょうか?

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クローズド・ノート

クローズド・ノート (角川文庫 (し37-1)) 

著者:雫井 脩介

刊行:2006年1月

評価:★★★★★☆☆☆☆☆ 5点

ストーリー:大学生の堀井香恵はある日の帰り道、香恵の部屋を見上げている男性に気付いた。しばらくして、アルバイト先の文具店で偶然その男性に再会する。彼に引かれ始めた香恵は、前の住人が部屋に忘れていったノートの言葉に励まされ、少しでも彼に近付こうと健気な努力を続ける。ノートを読めば読むほどその言葉に励ませされ共感した香恵は、その持ち主にノートを返しに行こうと決意した。このノートのお陰で、平凡な香恵の毎日は少しずつ変わっていったのだ。

感想:女の人が読むともっと違った感想を持つのでしょうか? ピュアなラブストーリーなのですが、ピュア過ぎました。安心して読めるストーリーだったのですが、安心出来過ぎるほど先の展開が予想できました。男性がなぜ香恵の部屋を見上げていたのか、彼は何者なのか、ノート持ち主はどうしているのか。全てが物語の最初から判り過ぎてます。

あえてそういう書き方をしたのでしょうか。その上で、香恵の恋がどうなるのかだけにスポットを当てたのでしょうか。残念ながら男性の目から見ると、少なくとも私の目から見るとそれは失敗だった気がします。

香恵に言い寄って来た鹿島さん。彼に自分をアピールしまくる星美さん。香恵と彼から出るピュアな恋愛オーラとは真逆に、大人の駆け引き恋愛オーラを出しまくる二人も、「そこまで嫌な奴に書かなくても」って感じでした。香恵と彼の純粋さを引き立たせるための媒介として描かれているのかもしれませんが、少々気になりました。

ただ、この作品は雫井さんが亡くなった実姉に捧げた作品だそうです。実姉もノートの持ち主と同様に小学校の先生をしていたとのこと。「こんな先生っていいな」と素直に思いました。特に小学生にとってはとても素敵な先生だったことでしょう。そんな素敵な先生でも恋愛に悩むことがある(雫井さんの実姉も恋愛に悩んでいたのかまでは知りませんが)ってのが、大人になった今の僕なら分かります。恋愛に悩みながらも全力で子供達と接する先生。僕ならすぐに「惚れてまうやろーーーー!!」って感じです。

クローズド・ノート スタンダード・エディション

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症例A

症例A (角川文庫) 

著者:多島 斗志之

刊行:2000年10月

評価:★★★★☆☆☆☆☆☆ 4点

ストーリー:亜左美。高校生。17歳。精神病院に入院する彼女の名は仮名だ。担当医である榊も本名は知らない。美しい亜左美はその言動で病院スタッフを振り回す。榊は亜左美を「境界例」と疑うが、臨床心理士の由起は「解離性同一性障害」(多重人格)だと主張する。その主張を受け入れない榊に、由起は自らをもってその可能性を示すのだった。そしてこの病院の特別室に隔離されている五十嵐は、国の重要文化財に隠された重大な秘密を知っているらしい。その秘密は、この病院の成り立ちにも深く関係しているかもしれない。彼の語る秘密は、彼の妄想、或いは虚言なのだろうか。

感想:この作品は基本的に二つのストーリーで成り立っている。「亜左美という少女は多重人格なのか」というストーリーと、「国の重要文化財に隠された秘密とは何なのか」というストーリー。私の率直な感想として、この2つのストーリーを平行して進行させる意味が分かりませんでした。

「重要文化財に隠された秘密」、そしてそれを語るのは精神病患者。その秘密を知るが故に隔離される患者。なかなか面白い物語でしたが、残念ながらどうもこちらはメインストーリーではないようです。亜左美という美しい少女と由起という臨床心理士、そして精神科医である榊。「多重人格」という受け入れ難い症例を中心として展開する3人の関係が中心に物語は進行していきます。この二つの物語を一つの物語の中に詰め込む必要が、果たして有ったのでしょうか? その必要性も、そして共存させることによる効果も分からないばかりか、どう二つがリンクしているのかすら私には分かりませんでした。

「境界例」とか「分裂病」とか「解離性同一性障害」とか、精神病院が舞台になっているのでそういうワードが出てくるのは当然なのでしょうが、その解説があまりにも医学書っぽいのも気になりました。亜左美をこの3つのどれと判断するかによってその対処の仕方が変わると言われても、その症例の違いの解説が専門的過ぎて・・・

最後に二つのストーリーがどう結びつくのか。そこに注目していたのですが、かなりあやふやなまま終ってしまった気がしてなりません。二つのストーリーを別々に作品にしても良かったのではないでしょうか? 結局最後までそのことばかりが気になって仕方がありませんでした。

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